【イラストメイキング】シリーズ展開を考えたシンプルタッチの食べ物イラストを描く

こんにちは。

今回は、3種類のスープのイラストをシリーズで描いたときのメイキングです。


こちらは当初から「文庫カバーとして使えるA4サイズのパターンイラストに展開する」と計画していたものです。

ネップリ文庫カバーについては、こちらの記事に書いています↓

私は現在、イラスト制作に Affinity Photo2 for iPad というソフトを使っています。

2024年ごろまで絵柄迷子でして…。

色んなソフトを試した結果、今のところ、このAffinityシリーズに落ち着いています。

使用ソフトについては過去の記事で少し紹介していますので、よろしければ読んでみてください。

記事の後半で、私がAffinity Photo2でイラストを描くときの最初の設定について書いています。

あくまで私の描き方の紹介ですので、こうしなきゃダメってことはぜーんぜん、ないです。

いろいろ試して、自分に合った描き方を探してみてください。

描くもの(テーマ)決める

温かくておなかに優しい食べ物⇒『スープ』を描くことにしました。

あとでパターンイラストにもするので、どんなパターンにするのかも、ここでフンワリと決めておきます。

私はメモや描くときのテーマ決めからラフ(下描き)まで、すべてアナログでおこなっています。

たいていはA4のコピー用紙にシャーペンまたはボールペンで、考えていることをバーっと書いています。

何に使うか決める

このシリーズは単体イラストからパターンイラストに展開する予定、

つまり、『あとで紙面(A4サイズの紙)で表示されるパターンの素材として使うイラストの制作』になります。

ですので、サイズを確認して決定します。

ここでは、

  • 正方形 1080×1080px
  • 解像度 350dpi

に設定しました。

もし自分が受け取る人だったら、どうなったら楽しいか考える

「ネップリで配布する」という目的があるので、『どうしたら受け取る人がより楽しくなるか』を考えます。

この点は常に考えますが、うっかりするとツルッと自分のためだけに描いてしまう癖があります。
なので、いつもより5割増しくらいで考えます。

ということで、「公表(告知)の仕方」も、ここであらかじめ考えておきました。

このあたりも、A4コピー用紙に書き出します。

資料集め

資料集めに、参考写真を検索します。題材によっては、動画を見ることもあります。

描くものが『スープ』のシリーズということで、ベースは『スープの器』にしました。

全体の大ラフ

検索するときには、画像検索を主に使い、『スープボウル』『スープカップ』『スープマグ』などをキーワードに探しました。

ちなみに、「出てきた画像にいまいちピンとこない…」そんなときには、

英語で検索すると、かなりの確率で検索結果がガラッと変わります。お試しください。

ここだと『soup bowl』『soup mug』など。


ここで、これと思う画像をいくつか決定して、ついでに「どんな素材でできているのか」「機能としてのデザイン的にどんな工夫がされているのか」などを調べます。

  • 手で持った時に熱くない耐熱性
  • 器のふちに口を付けた時、器の硬さを感じさせない厚み

などなど。

3種類の各スープで描く具材も同時に調べます。

具材を描くには内容を知る必要があるので、レシピサイトを検索することも多いです。

同じ料理でもレシピによって内容が微妙に違ったりします。なのでここはお好みで。

ちなみに今回トマトとチーズのポタージュ・きのこのポタージュのイラストには、生クリームを少し垂らした仕上がりをイメージしています。

大ラフ

資料集めとほぼ同時並行で、大ラフをザクザクと描いていきます。

大ラフを描く際は、一度頭に入れて改めて紙と向き合って描くよりも、資料を見ながら描く方が形がリアルに取れる気がします。

デッサンではないので、大ラフの段階では感覚的に、手が動くに任せるようにしています。

ラフ(下描き)

ラフ(下描き)は大ラフよりかはやや大きめに、かつ丁寧にしっかり描いていきます。

私の絵柄は主線(輪郭の線)が仕上がりに大きく影響するため、できるだけブレのない線で一気に描いていきます。

集中を途切れさせたくないので、この段階ではあまり休憩を取りません。

スープの中身を変えたシリーズにしたいので、ベースになるスープボウルを個別で描きます。

集めた資料を参考に描き進めます。

今回の場合は

「両手で包むように持てる、温かみと丸みのあるぽってりしたデザインの器」にしたかったので、

資料を元に

  • 「器を持った時に片手4本の指がスッと入れられる取っ手」
  • 「下部が耐熱素材」

をイメージして描きました。

左側の4つの小さめ正方形で描いているのが大ラフです。

パターン展開前の単体イラストとしてのアイデアを元に、構図と併せて器を考えます。

下描きはこちら。

文庫本のカバーにしたときに、袖の部分(折り返しの部分)を使ってなんか面白いことができないかと考えました。

が、

「本の厚みによっては袖ができない/見えない部分が出てきてしまう」

と気が付き、断念。

コーンスープのとうもろこしと、その粒の大ラフです。

正方形に収めようとすると、長さのある具材はデフォルメ調になりがち。

ですが、それが逆に自分の絵のかわいさに繋がっているんじゃないかと思っています。

下描きができました。

続けてトマトとチーズのポタージュの具材、トマトとチーズを描きます。

よく目にする穴あきチーズは『エメンタールチーズ』という種類だそうです。

前述の資料集めで、こういった知識も得られます。

私自身調べものが好きなので、ほくほくします。

しかし、だいたい描き終えたらすぐ忘れることもしばしば。

情報そのものがアップデートされている可能性もあるため、同じ題材であっても、大抵そのつど調べ直します。

こちらはきのこのポタージュの具材下描き。

数種類のきのこを描きます。

頭の中で、「バターでよく炒めた玉ねぎがとろとろになってすでにおいしい香り…」とか「きのこの風味がよく出て…」など、想像上の味覚と嗅覚をフル回転させながら描きます。

スキャン~データ化

ラフ(下描き)まで描いたら、スキャンして画像をデータ化させます。

スキャンには、Dropboxを活用しています。スマホアプリもあって便利です。

アプリ内に『ドキュメントのスキャン』という操作があり、これは白黒で撮影できて調整も効くので、重宝しています。

使用ソフト:Affinity Photo 2 for iPad

デメリットとしては

  • .ai(←Adobe Illustrator)の書き出しができない
  • 日本語テキストに弱い(縦書きに対応していない)
  • 日本式トンボ(トリムマーク)がない←紙の印刷物のとき、裁ち落としサイズ設定に工夫が必要

このあたり。

私が不自由を感じているのは、今のところそのへんだけです。

「買い切りがいいな」とか「ちょっと気になってるんだよね~」という人は、一度試してみるのをオススメします。


さて、いよいよデジタル作画に入ります。Affinity Photo2のアイコンをタップすると、左側にメニューがあります。

『新規』を選んでタップします。

さらに文字だけのメニューが現れますので、そこから『新規ドキュメント』を選択。

すると、下の画面になります。

あらかじめ用意されているテンプレートの中から『ソーシャルメディア正方形ポスト』を選択して、内容をカスタムしていきます。

  • 『寸法』→『DPI』を 350dpi
  • 『カラー』→『カラーフォーマット』を CMYK 
  • 『カラー』→『カラープロファイル』を Japan Color 2001 Coated

に、それぞれ変更します。

あとで印刷物にする可能性のある個人制作作品は、私はほとんどこの設定で制作しています。

『カラーフォーマット』がRGBのときは、必ず『カラープロファイル』を Adobe RGB (1998) に変更しておきます。

しっかり確認しておかないと、印刷したときのくすみっぷりに頭が真っ白になるぞ(自戒)

このカラー設定をしておかないと、印刷した時に色味が大きく変わってしまいます。

そして、このすぐ下に『透明な背景』にするかどうか選択できます。私は オン にしておきます。
こちらはオフにしていても、ワークスペース上で切り替えできるので、あまり気にしなくて大丈夫です。

設定を確認したら、『OK』をタップします。

本制作

描き始めは、この画面になります。

① 画面右上のあたりに、『レイヤー』アイコンが出ていますので、こちらをタップ。

② 『+』をタップすると、新規レイヤーを作成できます。

③ 『ピクセルレイヤー』を選択します。

「同じ器のスープのイラストシリーズ」を描くので、

器部分をはじめ、具材のイラストもそれぞれ細かくレイヤー分けしながら描いていきます。

あとでレイヤーを探す手間を省くために、レイヤー名も都度変えておきます。

シリーズ展開を考えていなくても、レイヤーはできるだけ分けるようにしています。

理由は、あとで描き直しや調整がしやすいからです。


最終的にこのくらいのレイヤー数になりました↓

「熱くない部分」→「耐熱素材」ていう言葉が出てこなかったらしい

主線(輪郭線)のブラシを設定する

① 右側ツールバーの一番上から、カラー設定をします。

② カラーモードを『CMYKスライダー』にして、

  • C(シアン) 3%
  • M(マゼンタ) 0%
  • Y(イエロー) 0%
  • K(キープレート:黒) 100%

に設定します。


① 右側ツールバーのブラシアイコンをタップして、ブラシを選択します。
プリセットのブラシがたくさん出てきます。

② この項目の <> をタップし、『ペン』カテゴリのブラシまで持っていきます。

③ ここで『シンプルペン』を選択。

くっきりしていて、かつ手描きの暖かさのあるブラシを探した結果、これになりました。シンプルブラシ、きみに決めた!

④ 左側ツールバーのブラシアイコンをタップ、ブラシサイズを調整します。
だいたい 15~30px 程度にしています。

本制作:線画

スキャンしたDropboxの原画データをドラッグ&ドロップやコピペなどで引っ張ってきます。

① 右側ツールバーの砂時計みたいなアイコンをタップ。『フィルター』で、線画抽出します。

② 原画レイヤーを選択して、『すべてのフィルター』から『背景の紙を消去』をタップ。

すると、線画だけがキレイに抽出されます。白い背景が透明(白とグレーの格子模様)になります。

わざわざ線画を選択しなくても、きれいに抽出してくれます

このとき、最初の設定で『透明な背景』をオフにしていると、抽出できたかがわかりにくいかもしれません。

そんなときは、以下の操作で解決します。


①左上の三本線のアイコンをタップして、『キャンバス』を選択すると『透明なキャンバス』の項目が出てきます。

そちらを選ぶと、いつでも透明⇔白背景を簡単に切り替えることができます。

本制作:塗り

前述したレイヤー分けの際に書いた通り、細かくレイヤーを分けながら描いていきます。

レイヤーが増えすぎて探しづらいので、グループにしていきます。

右側ツールバーのレイヤーアイコンをタップ。

グループの親にしたいレイヤーを選択してから、真ん中のファイルのアイコンをタップします。

このアイコンの1タップだけで、グループ化とグループ解除ができます。


さらに下層のグループを作成するときは、プラスのアイコンをタップして出てくる一番下の項目に

『空のグループ』がありますので、こちらを使用します。

選択しているレイヤーを親レイヤーにしたくないときなどにも便利。

配色レイヤーを作成して、色を置いていきます。

配色に関しては、過去記事で紹介した『配色アイデア手帖』という本をよく参考にしています。


私の絵柄は影を描かないフラットな塗りなので、塗り方に関してはここでは割愛します。

バケツ塗りではない、ということだけお伝えしておきます。

仕上げ

確認作業にいちばん時間がかかっているかもしれない

色のはみ出し・穴がないか、などを確認します。

確認の前には、だいたいひと寝入りします。

疲れているときに確認すると、逆にミスを見逃してしまうことが…あるので……(なんかやらかした)。

データ確認

サイズやカラープロファイルなどを、改めて再度確認して、完成です。


私のイラストには影の塗りがほぼなく、効果(フィルタ・エフェクト)を使わないのですが、大ラフの形や配置、配色をしっかり設計するようにしています。

こんなソフトもあります

「どんなソフトで描かれているんですか?」

と聞かれたときに、

「Affinity Photo2です」

と答えると、だいたいの人が「?」というお顔になります。


Affinityシリーズはまだあまり知られていないようなので

「こんなソフトもあるよ~」と思い、今回この記事を書いてみました。

Serif社の回し者ではありません。Adobeを…Adobeを嫌いになったわけでもないのよ…!


なんだか締めの一文でヘンテコなドラマ風になりましたが、この記事がイラスト制作のお役に立てれば幸いです。

今日はこの辺で。ではまた。


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